浮気調査や素行調査など、パートナーの不倫問題を解決するためには、探偵の技術や経験が大きく物を言います。本コラムでは、探偵歴20年の筆者が、張り込みや尾行といった現場のリアルな手法や、業界内で使われる数々の隠語、そして写真・映像から対象者を特定する「面取り(面起こし)」という探偵の高度な技術について解説します。法律や実務上のポイントにも触れ、より専門性の高い内容をお届けしますので、ぜひご一読ください。

このコラムを読むと以下のことが分かります

  1. 探偵業と法律の基礎知識
  2. 張り込みの真髄
  3. 尾行の実態
  4. 探偵業界特有の隠語
  5. 面取り(面起こし)の高度な分析技術
  6. 調査結果の使い方と法的アドバイス

1. 探偵業と法律の基礎知識

探偵業は日本において「探偵業の業務の適正化に関する法律(以下、探偵業法)」によって定められています。探偵事務所を開業するには都道府県公安委員会への届出が必要で、依頼者との契約前には契約内容や調査手法の説明などを行わなければなりません。また、プライバシー保護やストーカー規制法等の関連法令を遵守することも重要です。
こうした法律の存在は、探偵が違法な手段に走らないよう歯止めをかけるとともに、依頼者の利益や対象者の権利を守るために機能しています。


2. 張り込みの真髄

● 張り込みとは

張り込みは、対象者(以下、「タレ」とも呼ぶ)がどのような行動パターンを取っているのかを地道に把握するための基本手法です。浮気や不倫調査においては、対象者の帰宅時間や外出先を把握することで、浮気の事実を裏付ける情報を掴む手がかりとなります。

  • 最適な場所選び
    周辺住民や警備員から不審がられない場所を選ぶ必要があります。車内での張り込みであっても、ナンバープレートや車種、駐車場所が常に同じだと目立ってしまうため、複数台の車を使い分ける場合も。
  • 長時間にわたる待機への備え
    観察対象が出入りするタイミングを逃さないように、食事や防寒具、通信手段(スマホ・トランシーバーなど)を常備。長丁場となると想定し、睡眠不足対策防寒・防暑対策を徹底します。
  • 撮影・記録体制
    対象者が建物に出入りする決定的瞬間や、第三者(浮気相手)との接触を確実に押さえるため、高性能カメラビデオカメラを常にスタンバイ。状況に合わせて小型カメラや暗所撮影に強いカメラなど最新鋭の調査機材を使い分けます。

3. 尾行の実態

● 尾行とは

尾行は、対象者が移動を開始したら一定の距離を保ちながら追跡し、浮気現場や接触人物の有無を確認するための手法です。一瞬の油断が命取りになるため、緊張感と集中力が求められます。

  • 距離感のコントロール
    「ベタ」で付く(至近距離で尾行)と怪しまれやすく、逆に離れすぎると見失ってしまうため、絶妙な距離感を維持します。
  • 複数名での連携
    大規模な探偵社では3〜6人以上のチームで尾行することが多く、「オンブ」(サポート役)と呼ばれるメンバーが位置を交代しながら対象を見失わないように工夫します。さらに、先行・後続でターゲットを挟み込むように移動することで、一人が振り切られてももう一方で対処可能になる様な工夫があります。
  • 交通手段の使い分け
    車・バイク・電車・タクシーなど、状況に応じて柔軟に移動手段を変えます。都市部では車だと渋滞や駐車に苦労することも多いため、電車やバイクへ素早く乗り換えるテクニックが必要です。

4. 探偵業界特有の隠語

探偵同士の会話やメモでは、外部に情報が漏れにくいよう業界特有の隠語が使われます。ここでは浮気調査や素行調査の現場でよく用いられるものをさらに深堀りしてご紹介します。

  • タレ
    対象者のこと。「タレコミ情報」が語源という説があります。
  • ケツ
    尾行そのもの、または「ケツにつく」ことで追跡を始める合図。
  • 足(あし)
    探偵や乗り物を指す場合があり、「足を回す」は車やバイクを投入する行為を意味する。
  • ガサ
    自宅や車などを内々に調べる行為。警察用語の「ガサ入れ」が由来。
  • サクる
    決定的瞬間を撮影・録画すること。「サクッと撮る」が転じたとの説がある。
  • ベタ
    至近距離で対象者を尾行する。怪しまれやすいが見失うリスクは低い。
  • ショバ
    張り込み・監視を実施するエリア・場所。「ショバ代」は監視場所の確保にかかる費用を指す場合も。
  • ツラ
    顔(容姿)の隠語。顔写真を撮影する際や「ツラが割れる(顔バレする)」などの表現で使用。
  • ケツモチ
    チーム尾行の最後尾で周囲を警戒する役。対象者が振り向いた際のカモフラージュにもなる重要ポジション。
  • ガチャ
    対象者の情報を確認・照合する行為。または尾行現場での検証作業を指すことも。
  • アタリ
    調査対象が目標の人物・場所である確証を得ること。「アタリを付ける」とは確実に目星をつける意味。
  • しっぽ
    対象者のミスや痕跡。「しっぽを掴む」とは浮気の決定的証拠を得ることを指す。
  • 追尾
    対象者の尾行を行う事。
  • 放尾
    対象者の尾行を解除又は対象者が出てきても追尾しない事。例:ラブホテルから対象者が単身で出たが、不貞の証拠を押さえるため対象者を放尾し、第二対象者(浮気相手)の追尾に切り替える。
  • 勤割(勤出し)
    対象者の勤務先の割り出し調査。
  • 宅割(ヤサ割)
    対象者の居住先の割り出し調査。

5. 面取り(面起こし)の高度な分析技術

● 面取り(面起こし)とは

写真や映像、SNSプロフィール画像などから、対象者の顔を確定・照合する技術です。探偵や警察の現場で培われてきたノウハウに加え、近年はAIを活用した最新の顔認証システムが導入されることも増えています。

  1. 特徴の緻密な分析
    目・鼻・口のバランスや輪郭はもちろん、ホクロやシワなどの細部、髪の生え際、耳の形状までを総合的にチェック。
  2. 複数アングルの比較
    斜め・横・正面など各方向から撮影した写真を比較し、誤認を防ぎます。
  3. 背景情報の活用
    写真に写り込んだ建物や看板、季節感から撮影場所や時期を推定し、対象者を特定していく。
  4. AI・ソフトウェアの導入
    一部の探偵社ではAIや画像解析ソフトを活用し、瞬時に多数の画像を照合したり、被写体の属性(年齢・性別など)を推定する技術を用いる場合も。

浮気や不倫の調査では、決定的瞬間を撮影しても「それは別人ではないか?」と反論されるケースがあります。そこで「面取り(面起こし)」を行い、同一人物である証拠を示すことで、調停や裁判でも有力な証拠として活用されるのです。


6. 調査結果の使い方と法的アドバイス

探偵が入手した証拠は、主に離婚調停や裁判での不貞行為の立証に用いられます。日本の民法上、「不貞行為」は離婚や慰謝料請求の根拠となり得る重大な要素です。しかし、写真や音声データがあっても、以下のようなポイントを抑えておかなければ、証拠能力が十分に認められない可能性もあります。

  • 正当な手段で得た証拠であること
    違法な盗聴・盗撮による情報は、裁判での証拠採用が難しいだけでなく、逆にプライバシー侵害で訴えられるリスクも。
  • 日付や相手の身元が明確に示される
    不倫相手とのやり取りや一緒に写っている写真などは、日時や場所、人物の特定が明確であるほど証拠として強力になります。
  • 早めに弁護士に相談する
    探偵はあくまでも調査のプロ。法的なアドバイスや手続きは弁護士の専門領域です。調査結果をどう活かすかを早めに相談し、最良の解決策を模索しましょう。

7. まとめ:探偵が導く“真実”と安心

  1. 張り込み
    地道で根気の要る手法。対象者の行動パターンを読み解き、最適なタイミングと場所を見極める。
  2. 尾行
    専門的な距離感やチームワークが要求される高度なスキル。対象者にバレず、確実に追跡を続けるための工夫が重要。
  3. 探偵隠語
    業務連携をスムーズかつ秘匿性高く行うための独自文化。外部に情報を漏らさないための工夫が詰まっている。
  4. 面取り(面起こし)
    高度な分析技術であり、不貞行為などを立証する際の決定打となることも多い。最新のAI技術が導入されつつも、探偵の“職人芸”が色濃く残る分野。
  5. 法的視点を忘れない
    探偵業法やプライバシー保護の観点を常に意識する必要がある。違法性があれば調査結果が活かせないどころか、トラブルにも発展し得る。

浮気や不倫というデリケートな問題に直面するときこそ、専門家の力を借りる意味は大きいといえます。信頼できる探偵社は、違法行為に走ることなく、合法かつ適切な方法で調査を行い、依頼者が納得できる形で証拠を提示します。最終的に離婚・慰謝料請求という選択をするにせよ、夫婦関係を修復するにせよ、「真実を知ること」が第一歩です。

経験豊富な探偵社ならではの張り込み・尾行の技術、探偵隠語を使いこなす連携プレー、そして面取り(面起こし)の分析力が総合的に力を発揮し、依頼者をサポートしてくれます。もしパートナーの浮気や不倫に疑念を抱いているならば、ひとりで抱え込まずに専門家に相談してみてください。しっかりとした調査に基づいた証拠は、あなたが前に進むための大きな手助けとなるはずです。

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