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2026.10.08 コラム

現場ノート#021|「探偵が『今日は調査を中止しましょう』と言う日。」──24年間で学んだ“やらない勇気”

梅澤 賢樹|総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年目

現場ノート#021 探偵が今日は調査を中止しましょうと言う日。──24年間で学んだやらない勇気

「今日は、調査を中止しましょう。」

依頼者にこう伝える日が、年に何度かあります。

契約をいただき、日程も決まり、調査員も揃っている。

それでも、動かない。

探偵が「調査をしない」と言うのは、おかしなことに聞こえるかもしれません。

でも24年やってきて、この判断が一番、依頼者の結果を左右すると感じています。

「せっかくの日」ほど、立ち止まる

浮気調査では、依頼者から「この日が怪しい」と聞いて日程を組むことがほとんどです。

依頼者にとっては、やっとの思いで決めた日です。

費用もかかっています。

だからこそ、調査員は「今日こそ撮りたい」という気持ちになります。

その気持ちが強い日ほど、私は一度立ち止まるようにしています。

「撮りたい」と「撮れる」は、別のものだからです。

中止を決める材料は、現場に落ちている

朝の住宅街で、いつもと違う場所に停まっている自家用車

当日の朝、対象者の車が、いつもと違う場所に停まっている。

出てきた服装が、「出かける」服ではない。

出発の時間が、聞いていた時間と大きくずれている。

ひとつひとつは、小さなことです。

でも、こうした小さなズレが重なった日は、「今日は動かない」ことが多い。

そういう日に粘っても、何も起きない時間に費用だけが積み上がります。

一番やってはいけないのは「もったいないから続ける」

調査員も人間です。

「ここまで来たのだから」「依頼者に申し訳ないから」と思います。

でも、その理由で続けた調査で、良い結果が出たことは、ほとんどありません。

無理に続けると、集中力が落ちます。

集中力が落ちると、距離が近くなる。

距離が近くなると、対象者に気づかれる。

一度気づかれると、その後の調査すべてが難しくなります。

「もったいない」は、調査を続ける理由にはなりません。

中止は「何もしない」ことではない

車内で、何も起きなかった一日の時刻を書き込むノートとペン

調査を中止した日も、調査員は現場にいます。

どの時間に、どこへ、どんな様子で出かけたのか。

動かなかったなら、動かなかったという事実。

それを記録して、次の日程を組み直すための材料にします。

依頼者から見ると「今日は何もなかった」日ですが、

私たちから見ると、「次に動く日」を絞り込めた日です。

依頼者への伝え方が、一番難しい

夕方の車内で、スマートフォンを手に取る直前の手元

正直に言えば、中止の連絡は気が重いものです。

依頼者は、その日を待っていたからです。

だから私は、中止を伝えるときに、必ず二つのことを一緒に伝えます。

ひとつは、なぜ今日は動かないと判断したのか。

もうひとつは、次はいつ、どう組み直すのか。

「やめます」だけを伝えると、依頼者は不安になります。

「今日はやめて、次はここを狙います」まで伝えると、同じ中止でも、受け止め方がまったく変わります。

「やらない」と決めた日が、結果を作る

中止した日の記録があるから、次の日程の精度が上がる。

無理に続けなかったから、対象者に警戒されずに済む。

費用を使わなかったから、本当に動く日に、人数と時間をかけられる。

振り返ると、うまくいった調査の裏側には、たいてい「やらなかった日」があります。

依頼者には見えにくい部分ですが、ここが探偵の仕事の芯だと思っています。

24年間で変わったこと

若い頃の私は、中止の判断ができませんでした。

「今日もダメだった」と言うのが怖くて、動かない現場に何時間も張りついていました。

今は、「今日はやめましょう」と言えます。

それは、諦めが良くなったからではありません。

やらない日を作ったほうが、最後に撮れる確率が上がると、現場で何度も確かめてきたからです。

編集後記

今回は、あえて調査をしないという「やらない勇気」についてお話ししました。

では逆に、私たち探偵が、

「今日は動く可能性が高い」

「今日は勝負した方がいい」

と判断するのは、どんな時なのか。

浮気調査をしていると、対象者のちょっとした行動や、依頼者からいただいた何気ない情報から、

「この日は怪しい」

と感じることがあります。

曜日。

帰宅時間。

服装。

車の使い方。

スマートフォンの扱い。

それまでの行動パターン。

そして、長年現場に出ているからこそ感じる、言葉では説明しにくい「違和感」。

もちろん、勘だけで調査日を決めるわけではありません。

24年間の現場経験の中で積み重なった、小さな判断材料があります。

次回は、その部分をもう少し現場目線でお話しします。

次回予告

現場ノート#022「探偵が『今日は動く』と判断する瞬間。」──24年間で身についた“勝負日の見極め方”

「今日はやめましょう」と言う日がある一方で、「今日だけは調査した方がいいです」と依頼者に伝える日もあります。浮気調査の成否を左右する「いつ調査するのか」。24年間、数多くの現場で対象者の行動を見続けてきた現役探偵が、調査日を決める時に実際に見ているものについてお話しします。

梅澤賢樹(総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年目)

執筆者

梅澤 賢樹(うめざわ まさき)

総合探偵社R.A.D 代表|探偵歴24年目・年間1,500件超
埼玉県公安委員会 届出 第43230057号

24年間、現場の最前線に立ち続ける現役探偵。この連載は、個人が特定されないよう再構成した「現場の本物」の記録です。

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連載「現場ノート」— 探偵歴24年目、現場の本物を綴る

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