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2026.07.04 コラム

現場ノート#013|「調査は“尾行”より“引き際”が難しい。」──24年間で身についた、追いすぎないという技術

梅澤 賢樹|総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年

現場ノート#013|夜の車内で調査を続ける探偵チームと「引き際の判断」を記したノート

探偵という仕事をしていると、こんなことを聞かれることがあります。

「最後まで追いかけた方が、たくさん証拠が撮れるんですよね?」

気持ちはよく分かります。

依頼者の立場なら、私もそう思うかもしれません。

ですが、24年間、10,000件を超える浮気調査を経験してきて、私が強く思うことがあります。

調査は、追いかける技術より、引く技術の方が難しい。

私も新人の頃には分からなかったことです。

でも今は、この「引き際」が調査全体の成功率を左右すると感じています。

「あと少し」が一番危ない

ホテルを出ました。

決定的な写真も撮れました。

相手の自宅も分かりました。

その時、調査員の頭をよぎる言葉があります。

「もう少し追えば、もっと分かるかもしれない。」

この「もう少し」が、一番危険です。

人は成果が出ると、欲が出ます。

もっと証拠を。

もっと情報を。

もっと決定的な場面を。

でも、その欲こそが調査を壊すことがあります。

現場では「十分」がある

探偵の仕事は、情報を無限に集めることではありません。

依頼者の目的を達成することです。

例えば、

裁判で使う証拠。

慰謝料請求のための資料。

話し合いをするための事実。

その目的が達成できたなら、

それ以上追う必要がないこともあります。

「もっと撮れる。」

と、

「もう十分。」

この判断ができるようになるまで、私は何年もかかりました。

警戒心は帰り道から始まる

対象者は、会っている最中よりも、

別れたあとに冷静になります。

「今日は誰にも見られていないかな。」

そんな気持ちになるのでしょう。

バックミラーを見る。

遠回りをする。

コンビニへ寄る。

急に車線変更を繰り返す。

何気ないように見えて、

確認行動をする人は少なくありません。

そこで無理に追えば、

今後の調査すべてが難しくなる可能性があります。

一回の成功より、次の成功

24年間で学んだことがあります。

調査は、一日で終わるとは限りません。

二日目。

三日目。

一週間後。

また調査が必要になることも多くあります。

だから私は、

「今日の成果」

だけではなく、

「次回につながる終わり方」

を大切にしています。

対象者へ違和感を与えない。

警戒させない。

それも調査力です。

新人は「証拠」を見ている

ベテランは「流れ」を見ています。

新人は、

「撮れました!」

と喜びます。

もちろん、それは悪いことではありません。

でもベテランは、

「このあとどう終わるか。」

まで考えています。

その違いが、

調査全体の完成度を大きく左右します。

「追わない勇気」

現場では、

追える状況でも、

追わないことがあります。

例えば、

住宅街。

深夜。

人通りがない道。

一本道。

そこでは、

「追える」

「追うべき」

は違います。

無理をして対象者へ警戒されるくらいなら、

その日は引く。

その判断を何度もしてきました。

一番悔しい失敗

24年間で忘れられない経験があります。

若い頃、

「あと一枚だけ。」

そう思って距離を詰めたことがありました。

対象者は気づかなかったかもしれません。

でも、

バックミラーを見る回数が増えました。

寄り道が増えました。

翌日から行動パターンが変わりました。

証拠は撮れました。

でも私は、

「あの日、欲を出した。」

そう今でも思っています。

現場は、

成功から学ぶより、

失敗から学ぶことの方が多い仕事です。

「終わります」の無線

調査が終わるとき、

無線でこう伝えます。

「本日終了します。」

たった一言です。

でも、その一言を言うまでに、

何度も考えます。

本当に終わっていいのか。

まだ見るべきか。

十分なのか。

この数秒の判断が、探偵として一番難しい技術かもしれません。

24年間で変わらないこと

この24年間でカメラは進化しました。

通信も速くなりました。

AIも調査を支援する時代になりました。

でも、

「引く勇気」だけは、人が判断するしかありません。

現場では、

撮る技術より、

やめる技術。

追う技術より、

終わる技術。

その方が難しいと、

24年間で何度も教えられてきました。

編集後記

新人の頃、

「もっと撮れば良かった。」

そう思うことは何度もありました。

でも今は、

「今日はここで終わって良かった。」

と思う日の方が増えました。

調査は、

証拠を増やす競争ではありません。

依頼者の目的を達成するための仕事です。

その目的を見失わないこと。

それが24年間で身についた、

私なりの“引き際”なのだと思っています。

次回予告

現場ノート#014「尾行は、一人でやるほど難しい。」──24年間で確信した“チーム調査”の本当の価値

「探偵は一人で尾行するもの。」——ドラマではそう描かれることが多いですが、現実は違います。なぜベテランほど“チーム”にこだわるのか。現場でしか分からない連携の重要性についてお話しします。

梅澤賢樹(総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年)

執筆者

梅澤 賢樹(うめざわ まさき)

総合探偵社R.A.D 代表|探偵歴24年・年間1,500件超
埼玉県公安委員会 届出 第43230057号

24年間、現場の最前線に立ち続ける現役探偵。この連載は、個人が特定されないよう再構成した「現場の本物」の記録です。

👤 プロフィール・監修方針📊 浮気調査白書2026

連載「現場ノート」— 探偵歴24年、現場の本物を綴る

← 前話 #012「証拠写真より大切な一枚がある。」──報告書で必ず残す“最初の一枚”次話 #014 →「尾行は、一人でやるほど難しい。」──“チーム調査”の本当の価値📚 連載目次|現場ノートの全話一覧を見る

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