報告書を受け取ったとき、その場ですべてを理解し、気持ちまで整理する必要はありません。
説明を聞いているときには、うなずけた。けれど、自宅で写真を見返すと、一枚だけ気になる。時刻を読み直すうちに、その前後のことが分からなくなる。
そうした疑問は、報告書を受け取ったその場でしか聞けないものではありません。
前回は、報告書を作る側が「書かないこと」についてお話ししました。今回は、受け取った方が読み返したときに、何を確かめればよいのか。そのことを書きたいと思います。
以下の問いは、実際の依頼者の発言を転載したものではなく、説明のために整理したものです。
「この写真は、本当に本人ですか」

顔がはっきり写った写真ばかりが並ぶとは限りません。後ろ姿や、建物へ入る直前の姿を見て、本人なのか確かめたくなることもあると思います。
そのとき、「探偵が撮ったのだから大丈夫です」で終わらせるべきではありません。
大切なのは、その人物を本人と判断した根拠を、記録に沿って説明することです。事前に確認した情報、前後の写真、移動の記録など、当該の調査で実際に確認できている材料に戻ります。
一枚の写真だけでは分かりにくくても、前後を読むことで理解できる場合があります。一方で、記録を確認しても断定できない部分があれば、そこは断定できないと説明する必要があります。
疑問があるときは、「何ページの、何時の写真か」を教えてください。気になる一枚を特定するだけで、確認する場所がはっきりします。
「この日以外は、何もなかったということですか」
報告書に記載されていないことと、実際に起きていないことは、同じではありません。
調査を行った日、時間、場所。その範囲で確認できたことが、報告書の土台になります。調査をしていない日の行動まで、報告書から判断することはできません。
反対に、ある日に会っていたことが分かったからといって、別の日も同じだったと決めることもできません。
読み返すときは、結論を急ぐ前に、まず調査日時を確認してみてください。そのうえで、「この記録から分かること」と「まだ分からないこと」を分けます。
分からないことが残るのは、気持ちのよいことではないと思います。それでも、不安を埋めるために、記録のない部分まで答えを作ることはできません。
説明を聞き直すことと、追加調査は別です
報告書について質問することと、新しく調査を依頼することは、分けて考えてください。
まずは、手元の報告書と記録で説明できることかを確認する。それでも分からないときに、何を知りたいのか、その情報が今後の判断に必要なのかを整理する。この順番が大切だと考えています。
「もう一度調べれば安心できるかもしれない」という気持ちだけで、すぐに調査を増やす必要はありません。追加調査をしても、希望する事実が確認できるとは限らないからです。
追加調査を検討する場合は、目的、日時、体制、費用、確認できない可能性まで、あらためて説明します。延長・追加調査は、事前に内容と費用をご説明し、承諾をいただいてから実施します。
うまく質問をまとめなくても大丈夫です

「何が分からないのか、自分でも整理できていない」。そんな状態であれば、無理に質問文を完成させなくても構いません。
まずは、次の三つのうち、分かるところだけ伝えていただければと思います。
・気になっているページや写真、記載時刻。
・自分にはどう読めたか。
・どの部分をもう一度説明してほしいか。
例えば、「この写真の前に、どこから移動してきたのかが分からない」。それだけでも、確認の出発点になります。
また、写真の意味を確かめたいのか、結果を知った後にどうするか迷っているのか。この二つも、分けてよいと思います。一度の電話で、両方の答えを出す必要はありません。
報告書を受け取る日と、決断する日は同じでなくてよい

調査の結果が分かっても、すぐに今後を決められるとは限りません。
相手と話し合いたいのか。関係の修復を考えたいのか。法律上の選択肢を知ってから考えたいのか。まだ、どれも決められないのか。
その答えを、探偵が代わりに決めることはできません。
R.A.Dがまず担うのは、調査で確認した事実と、その限界を説明することです。その先に夫婦関係や気持ちの整理について相談したい場合は夫婦問題カウンセラーへ、法律上の判断について相談したい場合は協力法律事務所へ、必要に応じてご案内します。カウンセラーへの無料相談は、調査コンサルタントパックをご契約の方が対象です(調査中・調査後に3回まで)。それ以外の方には、利用条件と費用を案内時にご説明します。
調査の説明を聞くことと、人生の方向を決めること。それぞれに必要な時間があってよいと思います。
編集後記
報告書は、受け取った瞬間に読み終わるものではありません。
時間を置いて読み返すからこそ、気づくこともあります。そのときに大切なのは、疑問を飲み込むことでも、写真一枚からすべてを決めてしまうことでもなく、記録に戻って確かめることです。
私が大切にしたいのは、説明を聞いた方が、何が分かり、何がまだ分からないのかを、自分の言葉で整理できることです。
分からないところがあれば、その一か所から。報告書をお渡しした後の説明も、その姿勢で向き合いたいと考えています。
調査を依頼する前に、報告書を確認したい方へ。どのような写真や記録を受け取るのか、公開中の調査報告書サンプルでご覧いただけます。納品内容は、ご契約のプランにより異なります。調査前のご相談では、「何を確認したいか」「結果が分かった後に何を考えたいか」を、分かる範囲でお伝えください。
次回予告
現場ノート#026「もう一度、調べたほうがいいですか。」──追加調査を決める前に整理したいこと
報告書を読んでも、まだ気になることが残る。そんなとき、追加調査で何を確かめたいのか。その答えによって、必要な準備も調査の組み方も変わります。すでに分かったこと、まだ分からないこと、次の判断に必要なこと。調査を増やす前に整理しておきたい点を、探偵の視点からお話しします。

執筆者
梅澤 賢樹(うめざわ まさき)
総合探偵社R.A.D 代表|探偵歴25年目・年間1,500件超
埼玉県公安委員会 届出 第43230057号
24年間、現場の最前線に立ち続ける現役探偵。この連載は、個人が特定されないよう再構成した「現場の本物」の記録です。
