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2026.07.02 コラム

現場ノート#002|ホテルよりコンビニが難しい理由

梅澤 賢樹|総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年

現場ノート#002|車内からコンビニを張り込む探偵

「浮気調査で一番緊張する瞬間は、ラブホテルに入るところですよね?」

相談者や依頼者の方から、よくそう聞かれます。

確かに、決定的な証拠を押さえる重要な場面ですので緊張は走ります。

でも、24年間現場に立ち続けてきた私の答えは少し違います。

実は、ホテルよりコンビニの方が何倍も神経を使います。

探偵になったばかりの頃は、私もその意味が分かりませんでした。

ですが経験を重ねるほど、「コンビニこそ尾行の難所」だと痛感するようになりました。

「ちょっとコンビニ寄る」が一番読めない

対象者が車を運転していて、突然ウインカーを出します。

「コンビニか。」

この瞬間、調査員同士の空気が一気に変わります。

ホテルへ向かうなら、ある程度は動きが予測できます。

どこへ入るのか。どこへ停めるのか。どこから出てくるのか。

経験を積めば、ある程度の"読み"が効きます。

しかしコンビニには、その読みが通用しません。

駐車場が広いほど難しい

大型のコンビニは、駐車スペースが20台、30台あることも珍しくありません。

対象者がどこへ停めるのか分からない。

こちらも近すぎれば不自然。遠すぎれば見失う。

しかも、隣に停めることなど論外です。

自然な距離感を保ちながら、対象者の動きを見失わない位置を一瞬で判断しなければなりません。

この数秒の判断が、その日の調査を左右することもあります。

予定が一切読めない

ホテルなら目的は比較的明確です。

しかしコンビニでは、何をするのか全く分かりません。

飲み物を買うだけかもしれない。ATMを利用するかもしれない。トイレに入るかもしれない。車内で電話を始めるかもしれない。たばこを吸うだけかもしれない。

そして、一番困るのは——

何も買わずに、すぐ車へ戻ることです。

30秒で出てくることもあれば、20分以上出てこないこともあります。

調査員は、そのすべてを想定して動かなければなりません。

一番怖いのは「目が合うこと」

尾行は、映画のように物陰へ隠れる仕事ではありません。

むしろ、自然にその場へ溶け込むことが重要です。

コンビニは照明が明るく、見通しも良いため、不自然な車や人は意外と目立ちます。

対象者が車へ戻る途中、ふと周囲を見回したとき。店内から出る瞬間。駐車場を歩きながらバックミラー越しに確認したとき。

そんな何気ない瞬間に視線が交わる可能性があります。

だからこそ、調査員は「見ない技術」も身につけます。

対象者を凝視するのではなく、自然な動作の中で周囲を観察する。

経験を積むほど、この感覚は磨かれていきます。

コンビニは「交代」のタイミングでもある

24年間で何度も経験してきましたが、コンビニは調査チームにとって絶好の連携ポイントでもあります。

先頭を走っていた車両が少し距離を取り、別の調査車両が自然に近づく。

徒歩班が位置を変える。

対象者に違和感を与えないよう、役割を入れ替える。

こうした動きは事前に細かく打ち合わせています。

ドラマでは一人の探偵が何でもこなすように描かれますが、実際の浮気調査はチームワークの積み重ねです。

派手な場面よりも、こうした地味な連携が調査の成功率を支えています。

新人調査員に最初に教えること

新人が現場へ出ると、多くの人は「ホテルで証拠を撮ること」が一番難しいと思っています。

ですが私は、まずこう伝えます。

「ホテルを見る前に、コンビニを見ろ。」

車の停め方。対象者との距離。歩く速度。店内への入り方。車へ戻るタイミング。

こうした一つひとつの積み重ねが、尾行の基本になります。

ホテルでの決定的な瞬間は、その前の何時間もの自然な尾行があって初めて迎えられるのです。

24年間で変わらないもの

携帯電話はガラケーからスマホへ変わりました。

連絡手段もメールからLINE、Instagram、各種SNSへと移り変わりました。

車の性能も、カーナビも、安全装備も大きく進化しました。

それでも、24年間変わらないことがあります。

人は、日常の何気ない瞬間ほど油断する。

だからこそ、浮気調査は派手な場面だけではありません。

コンビニで飲み物を買う数分。信号待ちの数十秒。自宅近くで車を停める数分。

そうした「当たり前の日常」の中に、本当の証拠へつながるヒントが隠れています。

私は24年間、その何気ない瞬間を見逃さないことを大切にしてきました。

編集後記

現場へ出るたびに、新人調査員から「今日はホテルがありますか?」と聞かれることがあります。

私は決まってこう答えます。

「ホテルより、今日どこのコンビニに寄るかの方が気になる。」

この言葉の意味は、何百件、何千件と現場を経験すると自然と分かるようになります。

浮気調査は、決定的な一枚を撮る仕事ではありません。

決定的な一枚を撮るために、何気ない日常を丁寧に積み重ねる仕事です。

そして、24年現場の最前線で調査を経験してきた私だから知っている事。

対象者はコンビニに寄った後、ラブホテルに入る——。

梅澤賢樹(総合探偵社R.A.D 代表・探偵歴24年)

執筆者

梅澤 賢樹(うめざわ まさき)

総合探偵社R.A.D 代表|探偵歴24年・年間1,500件超
埼玉県公安委員会 届出 第43230057号

24年間、現場の最前線に立ち続ける現役探偵。この連載は、個人が特定されないよう再構成した「現場の本物」の記録です。

👤 プロフィール・監修方針📊 浮気調査白書2026

連載「現場ノート」— 探偵歴24年、現場の本物を綴る

#001探偵として24年間、書けなかったことを書こうと思う
この記事ホテルよりコンビニが難しい理由
#003「今日は動く。」──24年やっても説明できない“現場の勘”

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